2017 Toughroad SLR0 レビュー【グラベルバイク】

2017年モデル Toughroad タフロード SLR0 評価 インプレ

軽量アドベンチャーバイクとして海外では人気の高いToughroad(タフロード)。今回ご紹介する『Toughroad SLR 0』は、シリーズのトップグレードに位置するバイク。
また、バイクツーリングのための積載方法も、重量をおさえることが可能な『バイクパッキング』を意識したパーツ構成で、同時にバイクの軽量化がはかられている。


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概要・構成


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Toughroad SLR 0詳細

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
Toughroad SLR 0の一番の特徴はドライブ系。[SLR 1]と[SLR 2]のフロント変速は2段か3段と、チェーリングが複数あるギア構成ですが[SLR 0]ではチェーリングが1枚だけといったシンプルなもの。

チェーリングが1枚だけのバイクは、2016年モデルではラインナップにはありませんでしたが、2017年モデルから日本でも販売されることになりました。

バイクの重量

[SLR 0]ではトップグレードらしくバイク重量の軽量化がはかられました。それらはドライブ系だけでなくホイールやスモールパーツも含まれます。

完成車の重量はペダルレスで〈約10.5 kg〉。さすがに重量が10キログラムに近付いていると、バイクを持ち上げたときに軽さを実感できるでしょう。

フレーム / フォーク

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
Toughroadシリーズのフレームは、2016年の発売から早くも1年でフレームジオメトリが変更されました。この変更の理由は、より小柄なユーザーでも乗れるようにシートチューブ長を短く設計。これによりトップチューブの高さを抑えました。
2016年モデル・サイズXSの適応身長は〈160〜175 cm〉でしたが、2017年モデル・サイズXSでは〈155〜167 cm〉になっています。

また、シートチューブ長を短くしたことで、シートポストの露出部分が増え、従来よりシートポストが後方へしなりやすくなり衝撃吸収効率が向上しました。SLR 0ではカーボン素材のシートポスト採用しているため、さらに効果が上がりました。

フォークはカーボン素材で強度をもたせた大径なモノ。またヘッドチューブとコラムは剛性を上げるためにテーパードヘッドになっています。

フレームとフォークには、キャリアとフェンダーを取付けることができるマウント・アイレットを前後に装備。GIANT純正のほか社外品のキャリアを装着することが可能です。

ドライブトレイン

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
ドライブ系の構成パーツはSRAM(スラム)製のMTB用パーツを採用。上級グレードらしく全てが[SRAM GX]になっており統一感もバッチリ。変速段数は〈1×11〉の11段変速であるため、クランクとハンドル周りの部品が減って見た目はスマート。

フロントチェーンリングは変速無しのシングルで歯数は〈36T〉、リアのギアスプロケット(カセットギア)は〈11-42T〉と非常にワイドレンジ。この設定は29er(29インチホイール)MTBとほぼ一緒だが、競技用MTBとちがって荷物を積載走行する前提のバイクであるため、このようなギア比になっています。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》

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ホイール

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
ホイールセットは、ハブが[FORMULA DISC 28H / 32H]、リムが[GIANT PX-2 28H / 32H]。リムは、廉価・標準グレードに採用されている[GIANT S-X2 32H]ではなく軽量化と振動吸収性を両立させている。

スポークの本数は、前が28本、後が32本と変えてある。ちなみに2018年モデルの『SLR 0』は前後とも28本に統一している。

アクスルは前後ともクイックリリースで、前がQR 9 × 100mm、後がQR OLD 135mmの仕様になっている。

タイヤ

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
タイヤは、2017年モデルから全グレードに装着される[GIANT SYCAMORE S 700x50C]。推奨空気圧は〈2.1~4.5ber〉。

タイヤのノブは低めでスリットパターンが細かい。ドライ向けのXC(クロスカントリー)用タイヤのような感じで、少ない走行抵抗と悪路でのグリップを両立させている。

重量は〈約730 g〉で、それなりの重さがあり軽量クラスではない。チューブは[Cheng Shin]製で重量は〈約190 g〉。バネ下重量の軽量化は、タイヤとチューブを変更することで簡単に実現する。

ブレーキ

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
ブレーキシステムは油圧ブレーキ[TEKTRO SLATE T4]で統一。ブレーキキャリパーはコンパクトな4ポッド方式を採用。ブレーキローター径は〈160 mm〉。

ハンドル周りのブレーキレバーは細身でスマート。レバーの長さはワンフィンガータイプより少し長めで、指二本でも引くことが可能。また、指の長さに合わせることができるリーチアジャスターを装備。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》

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ハンドル / ステム

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
ハンドルバーはDH(ダウンヒル)や、DJ(ダートジャンプ)に対応できそうな強度高い[GIANT CONNECT XC RISER 31.8 640mm]を採用。ハンドル幅は29erバイクにしては短めですが、操作性や取り回しは良好。街中でも走行するなら、接触などの危険性を考えると、このあたりの長が良いと思う。

形状は低めのライザーバーデザインで、スイープは上方と後方に深めの設計になっており、トップチューブが長いフレームであるが手が届きやすくなっている。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
ハンドルステムは[GIANT CONNECT 31.8]。フレームサイズがXS、Sの場合〈70 mm〉の長さとなる。ライズ角は8度くらい。低い姿勢がとりたいのであればステムをひっくり返してセッティングするとよい。

サドル / シートポスト

2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
サドルは2017年モデルから新型の[GIANT CONTACT NEUTRAL]を採用。レース用にちかいスマートデザインのとおりクッション性は控えめ。感触も硬めな仕様になっており好みが分かれるだろう。耐衝撃性は、そこそこ高そうでハードな使用にも問題はなさそう。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《1:詳細・重量》
シートポストはGIANT独自規格D-FUSE。ポスト断面形状がカマボコ型になっており、しなることでショックを吸収させている。特殊形状になるため通常の円柱ポストへの交換はできません。SLR 0にはカーボン素材のポストが採用され振動吸収性に優れる。シートポストの前部分にはミリ単位の数値がプリントされているため細かい調整がしやすくなっている。

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実走レビュー

GIANT(ジャイアント)が2016年からリリースしている軽量アドベンチャーバイク『Toughroad(タフロード)』。このバイクは、オンロードの巡航性能とオフロードの走破性を兼ね備えた長距離ツーリングバイク。

『Toughroad SLR 0』は、変速ギアの構成がスポーツバイクとしては珍しく後にのみディレイラー(変速機)が搭載されており、クランクに付けられたチェーリング(歯車)は1枚のみの11段変速(1 × 11s)。近年のXC(クロスカントリー)MTBでも1 × 11sや1 × 12sといった同じようなリアディレイラーのみの変速構成が主流になっています。


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バイク・フィッティング

2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
購入した[2017 Toughroad SLR 0]のサイズは〈390(XS)〉。フレームジオメトリ(フレームの設計)は2016年モデルから大きく変更されました。

私の身長は〈約166センチ〉と長身でもなく手足が長くもありません。適応できるサイズは、カタログみるかぎり〈420(S):165〜175cm〉でも問題なく乗ることは可能です。しかし、ハンドルバーを低くセッティングするが好みであるため、ヘッドチューブ長が〈100mm〉の〈390(XS)〉を選んでいます。

身長〈166cm〉私がフィッティング済ませたサイズ〈390(XS)〉バイクのサドル高は画像を確認してください。サドルの高さは、クランク(BB=ボトムブラケット)の中心からサドルの天辺までの長さは約650ミリです。シートポスト長が〈約350mm〉あるため、まだ余裕で高さを伸ばすことができます。

そのほか、注意しておかなければならないのが、採用されているハンドルバーの後方曲げ角(バックスウィープ)が大きいため、トップチューブが長いToughroadてもハンドルグリップ位置が手前にきます。軽量化やポジション変更でバックスイープが〈0度〉にちかいストレートバーに交換すると、ハンドルグリップが遠くなるので、その点は気をつけてください。
そのような理由もふくめ、ユーザーはハンドルバーのライザーやバックスイープの数値によってハンドルグリップの位置調整が可能です。また手足の長いユーザーは、長いステムに変更することでも調整が可能です。

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Toughroad SLR 0の実走

2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
実走前にタイヤの空気圧チェックします。とくにスポーツバイクではタイヤ管理は重要な項目の一つ。空気圧の設定によってグリップから衝撃吸収にハンドリングといった『走行』フィーリングを左右します。

バイクのタイヤは[GIANT SYCAMORE S 700x50C]で推奨空気圧は〈2.1~4.2 ber〉。試走で色んな路面を走ってみて衝撃吸収フィーリングの良かった〈約1.9 ber〉に設定しました。ちなみに私の体重は〈約56キロ〉です。

発進・加速

2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
まずはターマック(舗装路)から実走。
走り始めは29er(29インチホイール)バイクらしい重めの漕ぎだしを予想していましたが、意外やスムーズに走りはじめました。
標準のタイヤとチューブは若干重めでありますが、そんな走行抵抗が低く感じられるほど軽快な走り出し。勢いよく漕ぎだせば、変速ギアは次々とトップギア付近に上がることになります。あきらかに同シリーズ『SLR 2』と発進と加速が違う理由は、構成されるパーツ群の違いにありました。

違いは、大きい要素で3つ。

  • バイク重量
  • フロントチェーンリング36T
  • ホイールセット重量

バイク重量

Toughroad SLR 0は、軽量フレームと軽量パーツ構成であるためバイク重量は〈10.5kg〉。SLR 2の重量〈11.5kg〉とくらべて1キログラムの差があります。

フロントチェーンリング

SLR 0の変速構成は〈1 × 11速〉という前変速がないシングルチェーリング。また、1枚しかない歯数は〈36T〉と小さいためギア比的に発進時の漕ぎだしは軽くなります。

ホイールセット重量

2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
ホイールは[GIANT PX-2 28/32H]というシクロクロスバイク完成車に採用される軽めのホイールを採用。アドベンチャーバイク用としては十分軽量なホイールセット。

以上の理由によってバイクの発進・加速が軽快なのです。

ちなみに『SLR 2』では[GIANT SX-2 32H]という強度と剛性の高いホイールを採用しています。重量はそこそこあるが積載荷重でも壊れないための重さです。

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巡航

SLR 0は、29インチホイールと太いタイヤの質量によって回転に慣性力が生まれるため、速度を維持するのが楽なバイクです。低い勾配や向かい風でも大きいロスがなく、適切なギアとペダリングトルクを入力すれば楽に進むことができます。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
タイヤの太さから考えても走りは軽く、同じようなギア構成とホイール径のMTBと比べても巡航速度は高く楽です。ただし〈1 × 11段〉といったギア構成であるため、高速巡航は得意ではなく〈30Km/h〉あたりを維持するためにはトップギア(36 × 11T)などを選択して漕ぎ倒さないといけません。

このバイクは、荷物をパッキングしてノンビリとサイクリングスピードで走行するのが合っています。『SLR 2』とは、ホイールの特徴もドライブギアの構成も全く違うため、両方乗り比べて自分の利用方に合ったバイクを選択できればベストですね。

グラベル走行

Toughroadはグラベルルート(砂利道)を長距離走行するため開発されたアドベンチャーバイク。早速ダートルートを走ってみましょう。

29インチホイールに〈50c〉幅のタイヤを装着したToughroadにとって砂利道は障害にはならず、バイクは安定して進みます。ライダーは普段どおりのペダリングと、ギャップを拾ってブレるハンドルバーを軽く補正するだけ。
グラベルロードバイクやクロスバイクなら避ける道路が荒れた箇所でも、わずかなハンドル操作と重心移動でクリアできる。タイヤのボリュームがあるため小粒の岩がつづく岩場の走破も問題ありません。ただし、パンクしないように尖った岩には注意が必要です。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
このバイクの強みはグラベルロードの下りにあって、グリップの低い路面でバイクコントロールしながら障害物を避けたり、ギャップをバニーホップや抜重でクリアしたりと、29er MTBのように勢いよく走行ができます。このようなフィールドルートではアドベンチャーバイクの高い走破性を実感。グラベルロードバイクでの走破は厳しい(危険)でしょう。

タイヤの振動吸収性が高いため、空気圧を〈約1.8 ber〉あたりに設定しておけば、ホイールの衝撃緩和とあわせて身体に伝わる衝撃の角をずいぶんと和らげてくれます。

登坂

変速段数が11速のToughroad SLR 0。変速が少ないと峠越えや登りラフロードで厳しい状況になりそうで心配の方も多そう。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
たしかに、〈2 × 11速〉や〈3 × 9速〉のようにワイドレンジな構成には及びませんが、SRAM製のリアスプロケット(後ギア)の歯車は〈11速:11-42t〉と最大が〈42T〉もある大きなもの。クランクのチェーンリングも〈36T〉とMTB並みに小さくギア比〈0.857〉です。『SLR 2』のギア構成でたとえると、リアスプロケットの最大が〈34T〉、センターチェーンリングが〈32T〉の場合、ギア比〈0.941〉なので『SLR 0』の方が軽いギアになります。この条件を『SLR 2』に仮想的なリアスプロケット最大として当てはめると〈38T〉になります。
それだけ軽いギアが使えるので、キャリアやパニアケースなどを積載して負荷をかけない状態であれば、登坂能力は十分にあることになります。
2017 Toughroad SLR 0レビュー《2:実走》
実走では勾配率15%の坂でも登坂は可能でした。車重も軽いためラフロードの登りも29er MTBのようにクリアできます。通常のサイクリングで大きな障害はないでしょう。あと、峠越えから延々と続く下り道では、ブレーキレバーを多く引くことになりますが、油圧ディスクブレーキ[TEKTRO SLATE T4]の余裕な制動力のおかげで連続するコーナーリングを十分楽しめました。